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インタビュー
本日のクリエイター
あつし
先生
人気作『帝国一の悪女に溺愛が止まりません!』のネームを担当。『2周目冒険者は隠しクラス重力使いで最強を目指す』でも読者から厚い支持を集めた実力派です。趣味は犬とおでかけすること。
「プロットはあるのに、ネームにすると途端に手が止まる」――そんな経験はありませんか?
ネーム作りは、Webtoonの面白さを決める大事な土台を築くことです。とはいえプロットを受け取ったあと、「何を優先して決めるべきか」で手が止まってしまうことも少なくありません。
本記事では、『帝国一の悪女に溺愛がとまりません!』などでネームを担当するあつし先生にインタビュー。プロットの意図をネームに変換するテクニックについて、縦スクロールならではのコマ割り・余白設計・感情演出まで、今すぐ試せる実践テクニックを伺いました。
※この記事は「人気プロが実践するWebtoonネームテク大特集! プロットからネームを作るための重要テクニック」で実施したインタビューを元に編集したものです。ネーム作りでお困りの方は、ぜひそちらもご覧ください!
小さい頃から絵を描いたり漫画を読んだりするのは好きでしたが、同人活動として形にし始めたのは高校を卒業してからです。
ネーム作家として活動するきっかけになったのは、X(旧Twitter)でWebtoon制作会社のネーム作家を募集する投稿を見て応募したことです。トライアルを経て採用していただき、そのご縁から現在に至ります。
少女漫画雑誌『りぼん』が大好きで、『神風怪盗ジャンヌ』などにはドンピシャで影響を受けています。
Webtoonですと、以前『comico※』で連載されていた『剣の王国』という作品です。縦スクロールで読むことを前提とした構図や、小回りの展開にものすごい衝撃と感動を覚えました。2014年頃の作品で、当時はまだWebtoonという言葉も浸透していませんでしたが、「縦で読める漫画があるんだ」と強く印象に残っています。
※comico…タテカラーオリジナルを中心に、さまざまなマンガを掲載しているアプリ

©あつし/SORAJIMA
毎回楽しみにしてくださる読者の方々には感謝しかありません。プラットフォームでのコメントの熱量が非常に高い作品だと感じていて、本当に愛されているなと。これはあじ先生のシナリオと、ペルラコット先生の非常に美しく見やすい線画の力が大きいと思っています。
ありがとうございます(笑)
私はあくまで「縁の下の力持ち」として、この作品を支えていければと思っています。
本作はロマンスファンタジーとしては珍しく男性視点から物語が始まるので、それが新鮮だなと感じました。女性主人公の作品が多い中で、男性視点は少しリスキーですが、同時に「面白い狙い目だ」と。
ヒロインのエステレラも自分の力で進んでいく強い女性なのもあって、シナリオを拝見した段階で「ネームを作りやすいシナリオだ」と感じたのをよく覚えています。
まずはプロットを読みながら、自分の頭の中で「こういう映像かな」とイメージします。それからもう一度、今度はあじ先生の指示を確認しながらプロットを読んで自分の中のイメージとのすり合わせをします。それから素案を作っていく形です。
あじ先生は見せたい映像をしっかり持っている方で、見せ場の指定もプロットに入っています。その指示をいかに形にするか、を考えるのが一番大切な仕事です。
ネーム作りは「プロットに書かれていることを読み取り、いかに形にするか」という視点を持てるかが重要じゃないでしょうか。
私はクリスタ(CLIP STUDIO PAINT)で使える3Dデッサン人形をコマの中に置いて「こういう絵にしてください」と指示するやり方です。キャンバス上で自由に動かせるので、しっくりくる構図を探しやすいのが利点ですね。

©あつし
最初は絵を描いていたのですが、後工程の方がやりやすい方法を考えたら3Dデッサン人形に行き着きました。その上で、キャラが分かるように表情やポーズを簡単に描きこんでいます。ネームの時点で描きこみすぎても、あまり意味はないので。
絵の赤い線は「カメラの目の高さ(アイレベル)」ということで、線画の方へのガイドとして置いています。
とはいえ、作画の方も仕上げの方もすごくお上手で「私がここまでする必要があるんだろうか?」と思ってばかりです(笑)。いつもすばらしい原稿に仕上げていただけて、本当にありがたいです。
ごめんなさい、本当にないんです。むしろ「このネームだと、もっとここをこうしてくれないと分からないよ」というところを皆さんに聞きたいくらいで……。
そうなんです! ネーム作りでは「ここ、次の工程に丸投げしたでしょ」という部分がないようにはしているんですけれど、各工程で思うところはきっとあると思います。このインタビューを通して、後工程の皆さんに想いが伝わるとありがたいです(笑)
前提として、読者さんが読みやすいコマ割りをしているということ。それと「あじ先生が頭の中で考えている映像をいかに再現するか?」をとくに考えています。
例えば、あじ先生が「ここが見せゴマです」と指示されているセリフや、その回のラストになる引きのシーンは、1.5から2スクロール分の大ゴマでやっています。それ以外にも、自分の中で「ここは大きなコマで作ってもいいんじゃないか」と感じたシーンは大ゴマにしたりしています。

©あつし/SORAJIMA
「ここは縦スクロールが映えるんじゃないか」というシーンも、思い切って大ゴマにしますね。『帝国一~』では、夜空から下に景色が流れていくシーンを3スクロールの尺で描きました。読者の皆さんからも好評で、チャレンジして良かったなと思います。
情報の量と順番は意識しています。
Webtoonでは1つのコマに1つの情報しか置けません。それ以上は雑多になりすぎて目が滑ってしまうんです。そんな時は、コマやセリフを2つに分けて情報量をコントロールします。

©あつし/SORAJIMA
順番に関しても、キャラクターの頭の上にセリフがあるのか、キャラクターの下の方にセリフがあるのかで会話の文脈や「間」が変わってきますね。
あとは、コマ内のキャラクターやオブジェクトの線が重なって見づらくなる「タンジェント」にならないように気を付けています。
余白は、会話のテンポ調整や時間経過を表現するために使っています。会話をテンポよく進ませたい時は少し余白を狭めにしますし、間をあけたい時は多めに余白を取ったりします。「どんなテンポで会話しているのか」は、常に意識していますね。

©あつし
このネームでは「こいつは本当に俺のことが好きなんだな」と思って一瞬ふっと笑う(画像左下)けど、次の「ありがとな」を言うまでは間を置きたい(画像右)、ということで余白を広めにしています。
厳密に決まっているものではないので、クリスタの機能を使ってスマホ画面サイズを確認しながら微調整します。
私のやり方ですと、雑でいいからすべてのコマとセリフを仮で置いた後に、一旦全体をスマホ画面で見て確認します。そこから描きこみ、さらに微調整をくり返して、最終的に気持ちよくスクロールしていけるネームに仕上げていくイメージです。
私がよくやるのは、キャラの感情に応じてフォントの使い方を変えることです。

©あつし
キャラが何かを考えている時って、心の声の大小やテンポの違いがあるはずなんです。
こちらのネームですと、昂っている気持ちを前面に出すためにモノローグを小さめのフォントにして、早口でまくしたてる感じを出しています(画像左)。
その後の締めのセリフはフォントサイズを若干大きめにして中央に置きました。(画像右)
このようにフォントの大きさや位置を変えるだけでも、キャラの感情を伝えられます。Webtoonはコマ割りや構図も大事ですが、もっとフォントで遊んでもいいんじゃないかなと思いますね。
「映すものは顔だけではない」と考えています。そのシーンを象徴するアイテムをアップにしたり、カメラを引きにして状況説明に徹したり……。カメラの距離によって心情を描くのか状況を説明するのかを使い分けることで、画面にリズムを作っています。

©あつし
キャラを棒立ちさせないことも大切です。間は会話している最中も身振り手振りするのが普通ですよね。このネームでは、会話しているキャラが拳を握りしめたり、相手の肩に手をかけたり、いろいろな「演技」をさせています。そういった動きを入れるだけで、単調な画面にはならないはずです。
見せ場で似たような絵面やポーズが重複していないかを見ます。せっかくの見せゴマなのに「似たようなポーズがもう1回来た」となるとちょっともったいないので。
それと、自分でスクロールしてみて気持ちよく読めるかも確認します。情報の密度が高すぎると指が止まってスワイプが詰まったりしますので、そうなったらテキスト量や余白を調整しています。
フィードバックいただいて修正することもありますが、全体としては3、4日ぐらいでやっています。
最近は、Netflixなどでアニメや映画を見るようにしています。Webtoonは横読みマンガよりもアニメの絵コンテに近い性質を持っているので、映像作品の方が参考になるんです。
最近だとアニメ『負けヒロインが多すぎる!』が印象に残っています。構図が非常に凝っている上に細かい光の演出や絵作りがすばらしく、とても勉強になりました。
一長一短だと思います。少なくとも、ネーム作りではあまり差を感じません。
むしろ、Webtoonは基本的に縦にしか動かないので、上下左右に読んでいく横読みと比べてネームを考える時間は短く済むと思います。横読みのネームで苦戦している人がWebtoonに来たら、意外とスムーズにできるかもしれません。
いつも応援ありがとうございます! プラットフォームやSNSでのコメントや反響は、あじ先生、ペルラコット先生、そして私にとっても大きな力になっています。これからも作品を深く愛していただけると嬉しいです。
「とりあえず書き始めてみる」
これに尽きます。1本作ってみれば、自分がやりたい演出や足りないものが見えてきます。まずは1回、画面に向き合ってみてください。
ありがとうございました!

©あつし/SORAJIMA
『帝国一の悪女に溺愛がとまりません!』はこちらから!
