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背景特化の職人! “背景作家”丹羽四つ葉先生が語る「SketchUpが広げた背景制作の可能性と魅力」

本日のクリエイター

丹羽 四つ葉

先生

イラストレーター、WEBライター、シナリオライターを経て、現在は縦スクロール漫画の背景作家として活躍中。これまでに5本の連載作品で背景を担当。
noteやXでスケッチアップのTIPSを発信する傍ら、背景監修やスケッチアップの講師としても活動中。

「背景制作」という職人の世界に迫ります。

Webtoonの背景を専門に手掛ける「背景作家」をご存知でしょうか。丹羽四つ葉先生は、背景専門の作家としてプロの世界の第一線で活躍される「背景作家」のひとりです。

「描くこと」を仕事にする道を選んだ丹羽先生は、「SketchUp」※というツールによる背景制作の第一人者でもあります。SketchUpによる背景づくりのノウハウをnoteで発信しながら、背景の可能性を広げるために日々挑戦を続けています。

今回は、丹羽四つ葉先生の背景作家としての歩みをお聞きしました。マンガに欠かせない「背景」を徹底的に極める職人の声をお聞きください。

※「SketchUp」…3次元モデリング・ソフトウェア。プロ、アマを問わず広く普及しているツール。無償版あり。

好きから始まり「背景作家」という選択へ

―まずは、これまでのクリエイターとしての歩みをお聞かせいただけますか?

昔からマンガが好きで、読むのも描くのも楽しんでいました。高校生までは絵を描いて友達と見せ合ったりしていましたが、大学・社会人と進むうちに描く機会は減り、読むだけになっていました。

出産後に一度仕事を辞め、「これからどうしよう」と考えたとき、家でできる仕事を探し始めたんです。まずはライターを始め、とっつきやすかったこともあり、すぐにYouTubeマンガ動画のシナリオライターの仕事にも挑戦してみました。

―ライターからキャリアをスタートされたのですね。

シナリオを書きながら「作画にも挑戦してみよう」と思い立ち、作画の仕事に応募しました。ちょうど流行ジャンルだったこともあり採用されましたが、キャラクター線画がとても苦手で苦労しました。

そんなとき、「着彩と背景だけを担当する」という分業型のYouTubeアニメの仕事を見つけました。それならできそうだと思ってクラウドソーシングで探していたら、Webtoonのお仕事と出会ったんです。

―Webtoonとの出会いが、背景作家としての活動につながったんでしょうか?

正直、それまでWebtoonはほとんど読んだことがなく、「カラーで縦に読むやつね」くらいの認識でした(笑)。もともと紙のマンガ派だったので、アプリで読むWebtoonにはあまり馴染みがなかったんです。

最初に関わったWebtoonの仕事がソラジマさんで、ちょうど日本産Webtoonが出始めた頃でした。人手不足もあり、背景担当として入るチャンスをいただけたんです。

本当は着彩が得意だったので「色塗りの仕事がしたい」という思いもありましたが、とにかく今できることを一生懸命やろうと決めて、背景の仕事を始めました。

丹羽先生が手掛けた背景

―背景制作において、影響を受けた方や刺激を受けた作品などはありますか?

一番影響を受けた、というか好きだなと思ったのは韓国のWebtoon『主役の初体験、私が奪っちゃいました』です。抜け感が良くて、すっきりした背景だったのが印象的でした。「どうやって描いているんだろう?」という驚きが大きくて。

その頃はまだSketchUpを知らなかったので――今なら多分SketchUpを使ってるなと思えるんですが――当時はまったくわからず、「どうやって表現しているんだろう?」とずっと不思議に思っていました。

特に緻密な背景が印象的で、「CLIP STUDIOには絶対にない素材だし、どうやって描いているんだろう?」と考えていました。

SketchUpが広げた背景作家の可能性

SketchUpによる背景作業

―SketchUp、という単語が出ました。丹羽先生を語る上で欠かせないツールですが、使い始めた当時のことを詳しく教えていただけますか?

とあるスタジオの仕事で「SketchUpを使っているから、これを使って」と言われたのが、SketchUpとの出会いです。

最初は「なんだこのソフト?」と思いましたが、私は新しいソフトを覚えるのが得意な方だったので「やってみるか!」と。

それで使い始めて、やっと「『主役の初体験、私が奪っちゃいました』の緻密で綺麗な背景は、これだったんだ!」と答え合わせができたんです。「繋がったぞ!」って思いましたね。

―初めてSketchUpを使ってみた印象はどうでしたか?

まず「すごく綺麗!」と思いました。

CLIP STUDIOの3Dには当時ずっと不満があって、「線画がガサガサでぼそぼそしている……」と感じていました。綺麗にするために線をなぞったり、クリーンアップに時間がかかってしまって、CLIP STUDIOには無駄が多いと思っていたんです。

CLIP STUDIOの線画

ですので、一発で線画が綺麗に出るSketchUpにはとにかく感動しました。マンガは線画が命だと思っているので、「線画が綺麗なの最高!」って感じましたね。

SketchUpの線画

―確かに、比べてみるとSketchUpは綺麗ですね。SketchUpを使うようになってから、仕事の幅が広がったと感じるエピソードはありますか?

最初は習得コストが大変で、あまり効率化はできませんでした。だんだん操作に慣れてきて、私がnoteでも紹介している「WEEX」というまとめて出力してくれるツールを導入してからは効率が一気に上がりましたね。

SketchUp作業中(WEEX使用)

たとえば週間連載ですとCLIP STUDIOでは1作品がやっとでしたが、SketchUpを使い始めてからは2作品でも余裕が出まして、最大で2.5~3作品ほど対応できています。作業量が増えれば収入もアップしますので、非常にありがたいです。

特に当時はSketchUpがまだ日本ではあまり普及していなかったので、スキルとしてアピールポイントにもなりました。今ではSketchUpを使える方も増えていきていますが、仕事を得る上でも強みになると思います!

―背景作家にとってSketchUpは重要なツールになってきているのでしょうか?

最近のWebtoonの新作では、ほとんどSketchUpが使われています。ファンタジー系では完全にSketchUpが主流ですね。

ただ、現代ものについては少し事情が違います。SketchUpの素材は韓国製が多いのですが、日本とは文化や空間の間取りがかなり違うので、そのまま使うと違和感が出やすいんですよ。最近は日本らしい素材も増えてきましたが、現代ものについてはまだCLIP STUDIOのほうが素材が多いです。

―Sketch Upを取り入れる際に苦労したエピソードはありますか?

そもそもSketchUpは建築や土木分野の3Dソフトなので、マンガ制作のノウハウが少ないんです。マンガ制作に特化した使い方が想定されていないですし、私が触り始めた頃は誰も教えてくれない状態でした。

特に日本語や英語では、マンガ向けのリファレンスがほとんどありません。韓国語では情報があるかもしれませんが、さすがに韓国語までマスターして勉強するのは大変ですしね……。

共有したいのは、試行錯誤から得た「気づき」

丹羽先生のnote「ウェブトゥーン背景×スケッチアップ」

―それで、培われたノウハウをnoteで発信しようと思ったのでしょうか?

私自身たくさん試してやらかしまくったので(笑)、同じ失敗を他の人にはしてほしくないんです。「他の方は整備された道を進んでほしい」「その道を作る役目を自分が担おう」と思いました。

それで、他の人たちもSketchUpを好きになって、みんながノウハウを発信してくれたら嬉しいな……と。

―まさに第一人者ですね。noteの発信を通して、反響が大きかった投稿はなんですか?

一番反応があったのは、SketchUpとCLIP STUDIOの3Dの違いを説明したnoteですね。特に線画の綺麗さの違いについては、多くの方が気になっているポイントだったようです。

ただ、反響はあっても「CLIP STUDIOがあるからそれでいいんじゃない?」と思う方がまだまだ多いんですよね。新しいツールに挑戦するのは大変なので、その気持ちはよく分かります。

でも、本当にSketchUpは良いツールなので、ぜひ使ってほしい。最近はモノクロにも使ってもらいたいと思っています。

―SketchUpはモノクロとの相性も良いんですか?

モノクロではラインやアウトラインが大事なので、線画が綺麗なSketchUpはとても向いていると思います。

そんな内容をnoteでも発信を続けていますが、まだ飛び込んでくれる方は少ないですね。でも、いつか大勢がSketchUpを使う流れが来ると期待しています!

―noteで発信するにあたり、最も大切にしている考え方やポイントは何でしょう?

専門用語を極力使わないように心がけています。SketchUpの専門用語は初心者には難しいので、まずは一般用語で説明しています。

細かいことは置いておいて、「まずやってみよう」程度の気軽なスタートをしてほしいですね。

背景作家に必要なのは「職人の視点」

―背景制作にあたって、特に意識されていることはなんでしょうか?

マンガの中でSketchUpを自然に使う技術ですね。特に大事なのは線画で、具体的には、SketchUpで線画をきれいに出す方法と、違和感のない影の作り方を意識しています。3Dっぽい影ではなく、マンガらしいパリッとした影を作る技術が大切です。

背景の役割はキャラクターを引き立てることで、音楽で言えばベースのような存在といえます。加点を狙うより、減点を減らすという考え方。これが意外と難しいですが、やりがいがあります。

背景とキャラクターを合わせる作業

―ただ綺麗な背景を描ければいいわけではないのですね。

その通りです。背景作家は「作品にどう貢献するか」という考え方を持つ必要があります。

マンガの主役はキャラクターです。背景はキャラに違和感を与えず、邪魔せず、うるさくしないことが大事なんです。

たとえば、背景の線画がガチャガチャしていると悪目立ちしますよね。あるいは2000年代のCGアニメのような3D感のある背景では、キャラが乗ったときに違和感が出てしまいます。SketchUpはその違和感を減らすのがとても得意なんです。何度も言いますが、とにかく線が綺麗ですから。

―背景は線画がポイントなんですね。

違和感のない背景を作るためには、綺麗な線画と影が不可欠です。

CLIP STUDIOの線はどうしても荒くなってしまい、描き直すことが多かったのですが、SketchUpならその手間がありません。背景をがんばりたい方は、まずSketchUpを試してほしいです。

―最後に、今回のお話を通して背景作家に興味を持った読者へ応援のメッセージをお願いします。

まずはマンガが好きなこと。これが一番大事です。

私がやっています背景作業はどちらかというと職人的なポジションで、ネームやキャラクター線画に合わせてコツコツ調整する作業が中心です。

自分のクリエイティビティを爆発させる芸術家ではなく、まじめに働ける職人気質こそが背景作家の本質ではないでしょうか。コツコツ作業が苦にならない人には、ぜひ挑戦してほしいですね。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。背景作家としての考え方やSketchUpの可能性について、改めて深く知ることができました。

こちらこそ、ありがとうございました!


丹羽先生の背景と、キャラクターが合わさった完成品

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