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インタビュー
本日のクリエイター
綾峰欄人
先生
漫画家/兵庫県出身
週刊少年マガジンにて、同誌の歴史に残るヒット作『GetBackers -奪還屋-』作画担当としてデビュー。美しく繊細な画力で多くのファンを魅了した。現在は『100の魔石の大賢者』のキャラデザ&ネーム担当。趣味は女の子を描く練習とニコニコ生放送、好きなゲームは『マインクラフト』。
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長月観
先生
1999年に『GetBackers -奪還屋-』でデビューし、美麗を極めた画力でファンを虜にした綾峰欄人先生。商業マンガの第一線で活躍してきた「レジェンド」ですが、2025年に『100の魔石の大賢者』ネーム&キャラデザ担当でWebtoonデビューしたのはご存知でしょうか。
「横読みマンガの最前線を経験したレジェンド作家は、Webtoonをどう描くのか?」
気にならないクリエイターはいないと思います。 今回はネーム作りを中心に、綾峰先生が実践しているテクニックや制作の実態まで、徹底的にお話を伺ってきました。『100の魔石の大賢者』で使われたネームも紹介していますので、新人クリエイターは必見です!
ソラジマの編集者さんがDMしてくれたのがきっかけです。私自身、当時はマンガから少し離れていて、Webtoonもノーマークでした。
仕事もちょうど空いていて「いろいろやってみたいな」と思っていた時期だったので、お声かけいただけてすごくありがたかったです。
幸いにも担当の方が誠実にマンガと向き合われていて、すごく相談しやすくて助かっています。
私はある程度名前が出ている人間なので、扱いにくい存在になってしまうこともあると思うんですけど、こちらの要望にすごく丁寧に対応してくれています。やり方や考え方を柔軟に変えられる人たちが集まっていて、本当にありがたいです。
私は週刊誌のマンガしかやってこなかったので、最初は「Webtoonってここまでやるのか!」と驚きました。週刊誌の1話を作るよりも重たい作業だと感じましたね。やっていくうちに改善されてはきたんですけど、最初は正直「これは大変だな」と。
いやいや、持ち上げすぎですって笑。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
命を注ぐ……なんて言うとちょっと大げさですけど、ネームはマンガの設計図なんですよ。
ネームの段階でわかりにくくて後工程の担当者に誤解されたりすると、最終的な作品が読者に伝わらなくなる。分業である以上、ネーム担当がしっかり設計しないと、他の作業に繋がらなくなっちゃうんです。
ネームが悪いせいで「なんか違うね」ってなってしまったら、せっかく作ってもらった原作が無駄になります。だから週刊連載の頃から今までずっと「ネームは設計図」という気持ちは大事にしてきました。
そう思われるのは、私の土台が関係しているのかもしれません。
マンガ家を志した高校時代に「この見せ方、違うんじゃないか?」と思って、他の作家さんを真似したり「どうしたら伝わるのか」「どうしたら見やすいのか」を探って、同じページを7回、8回も描き直したりしていました。
そういう体験が、私の土台になっているんだと思います。
そうですね、もともと「人にどう見られるか」を意識するタイプだったので。「自分を他人にどう見せるか?」みたいなことは、デビュー前から考えていました。
デビュー作の『GetBackers』の時、担当さんや原作者の青樹さんにネームを見せたら、「見せ方が分かってるね」と言ってもらえて、それが自信になったんですよね。自分のやってたことは間違いじゃなかったんだと。
だからこのやり方を突き詰めていこうと思って、今に繋がっています。
WebtoonにはWebtoonの見せ方が絶対にあるはず、という意識は強く持っています。
Webtoonってアニメのコンテにちょっと似てるなと思うんです。アニメのコンテって、アニメーターさんに伝えるための設計が非常にしっかりしているんですよ。キャラの「動き」や「視線の誘導」などを、マンガに落とし込む際にどう見せていくか、カメラワークの見やすさも含めて。
そのテクニックを具体的にどうすればいいか、ここ2年間やってきて、少しずつ身についてきた感じはあります。
では、私が作ったネームをもとにお話しますね。
例えば、このネームはだいたい「スマホの画面」に表示されるサイズなんです。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
絵の見せ方としてはこれでも問題ないのですが、プラスアルファで続きの画面を少し長めに取ってあげるんです。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
こうすることで「間」や「時間経過」を読者に感じてもらうように工夫しています。「読者が読むスピードをこちらでコントロールできないか?」というチャレンジですね。他にもキャラの気持ちを伝えたい時にもコマを長めに取ったりします。
これ自体は普通のWebtoonでもある演出なんですけど、それに加えて「どうしたら縦読みで時間を感じさせられるか?」というのも考えています。
Webtoonはスマホの画面内で表示される前提で作られているので、どうしても絵が小さくなりがちです。なので、絵を生かすためにセリフの位置やバランスを工夫しています。
例えば「セリフの合間にしっかりした絵を挿入して、最後に言いたいことを持ってくる」というのもひとつのテクニックです。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
縦読みならではの「流し読み」の構造に絵とセリフを合わせることで、読者自身がスクロールする感覚に合わせて、自然と時間の流れを感じられるように意識しています。
そうですね。「だいたいこれくらいの感覚で読んでもらえたらいいな」と考えながら、読者の時間をコントロールできないかと常に意識しています。
あと、これは私のクセかもしれませんが、画面を斜めに構成して、空間を広く見せるようにもしています。縦構図だと横幅が狭くなりがちですが、斜めにすると空間の広がりを演出しやすくなるんです。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
横読みマンガでは「ページの開き」をすごく意識します。雑誌を読者がパラパラとめくると、目線は自然と左ページに向くんです。左側の上部に印象的な絵を配置すると「あ、このマンガ面白そうだな」と感じてもらえる。それが横読みのテクニックのひとつです。
ですが、Webtoonには「ページの開き」がないので違うアプローチが求められます。そこが大変でもあり、面白い部分ですね。
横読みマンガの難しさは、「1ページ内でのコマ配置」にあります。『GetBackers』とかはセリフが多くて、どうしてもコマが詰まりがちだったんです。
それに比べてWebtoonは1ページの制約がなく、1コマ1コマを独立して見せられる。コマの大きさをあまり気にせず描けるのはとてもやりやすいです。 先ほどのお見せしたネームのようにセリフの位置も柔軟に調整できますので、表情や動作を伝えやすく見せられるんです。
今までの自分の弱点——キャラクターが窮屈に見えてしまう、という部分を補えるのが縦読みの魅力です。そういう意味で、縦読みは実験的な表現がやりやすいですね。
縦読みの魅力のひとつに「余白の使いやすさ」があると思っていまして、心理描写や時間経過の表現に使えるんです。セリフの配置も、中央だけでなく左右に寄せたりすることで演出効果が変わってきます。縦の空間を使って心の変化や流れを自然に見せられるので、いろんな手法が取れるのが面白いですね。
横読みで同じことをやろうとすると、ページ数がすごく増えてしまうんですよ。でも縦読みでは、それが自然に演出として機能する。とてもやりやすいです。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
横読みマンガで余白を多めに使うと間延びして見えてしまいますが、縦読みなら演出として機能します。
これって、実は少女マンガの手法に近いんですよ。少年マンガは情報を詰め込む傾向にありますが、少女漫画は感情表現のために余白を活かします。だからWebtoonは、どちらかというと少女マンガ寄りじゃないでしょうか。
私は少女マンガが好きで、とくに『ウィングス※』作品をよく読んで育ちました。だから自然と合っているんでしょうね。
※新書館が発光する月刊少女マンガ誌
そうですね。他の人よりはやりやすさを感じていると思います。
キャラクターを描く際は、その人の癖を個性として少しずつ入れているつもりです。「この子だったらこういう行動をするだろうな」とか、「こういう喋り方、表情、対応をするだろうな」といったように、それぞれのキャラに合った反応や動きを意識してネームに落とし込んでいます。
そういった差別化はしているつもりですが、もっと大きく個性的にできたら、より印象に残りやすいと思うんです。今の時代は、個性を前面に出すことが重要なので、そこはまだまだ足りない部分だと感じています。
長月先生とは編集さんを経由してやり取りしています。
長月先生が作ったキャラクターを自分なりに解釈して「こういう描き方はどうでしょうか?」と編集さんに投げかけて、それを編集さんが長月先生に伝えてくれる――そうやって三者でコンセンサスを取っていく形ですね。
完璧ではないかもしれませんが、お互いにアイディアを出し合うことで、キャラクターがより動きやすくなるような工夫はできていると思います。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
実は面白かったというよりは、「大丈夫かな」っていう心配のほうが先に立っています。私のネームって線画担当や彩色の方にとってはかなり大変な代物で、友達に「お前のネームは人を苦しめる」って言われるくらいなんです笑。
だから、面白いというよりも後の工程の方々への「ごめんね、大丈夫かな?」という気持ちの方が強くて……。
でも『100の魔石の大賢者』に関しては、みんなでアイデアを出し合いながらやっている感じがすごくあります。
「こうしたらもっと面白くなるんじゃないか」といった話がちゃんとできていて、しかもそれがみんなに「面白いね」と受け入れられて進んでいく。それはすごく面白いなと思いましたね。
Webtoonの分業制自体が私にとっては初めての経験で、読者にどう伝わっているのか、どう感じてもらっているのかという不安もありますが、チームのみんなが「面白い」と感じて取り組んでいると、自然とそのエネルギーが作品にも乗ってくるんじゃないかなと思っています。
好きなファンタジーもいいですが、SFも描きたいですね。これまであまり描いてこなかったジャンルにも挑戦してみたいです。女の子がたくさん出てくるような作品も、実はやってみたいと思っているんですが、それはちょっと難しいかなとも思いつつ……。
あと思っているのは、Webtoonってスポーツものがすごく合うと思います。
そうなんです。特にサッカーみたいにダイナミックな動きがあるジャンルは、縦スクロールで表現しやすくて、とても合うんじゃないでしょうか。いつか挑戦してみたいですね。
私自身、まだまだ新人のWebtoon作家ですが……。
Webtoon、まだまだ開拓の余地があるジャンルだと思います。今後、大ヒット作品が出てくれば、もっと一般層にも受け入れられるはずです。そうなれば、より多くの人に親しまれるジャンルになると思います。

© 綾峰欄人 / SORAJIMA
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