

#
インタビュー
#
Webtoon作家
#
ネーム作家
本日のクリエイター
玉山雄大
先生
玉山雄大
マンガ家/ネーム作家 岩手県出身
専門学校バンタンアニメマンガ学院出身。第86回手塚賞佳作を受賞後『炎魔火魅女』でプロデビューを果たす。
ゲームを遊ぶことと実況動画を見ることが大好き。これもマンガのためのインプットなんです。
Webtoonでも大人気のバトルアクションを面白く描くには、絵がうまいだけでは足りません。構図や演出を決めるネーム作りから高い技術を要求されるアクションをどう描けばいいか、途方に暮れている人も多いはず。
そこで今回は、ハイクオリティなバトルアクション読切『プリズンエンペラー』『超殺し屋』のネームを担当された玉山雄大先生をお呼びし、「バトルアクションのネーム作り」についてお話を伺いました。
単なる技術論だけでなくクリエイターに大事な姿勢についても熱く語っていただいた約100分のインタビューの記録、ぜひご覧ください!
15歳くらいからマンガ賞に応募したりしていました。『週刊少年ジャンプ』の手塚賞で佳作をいただいたり、『炎魔火魅女』という横読みの商業作品を出させていただいたり、紆余曲折ありながらクリエイターを続けています。手塚賞の受賞パーティーで『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生とお話させてもらったのは、いい思い出です。
その後はいろいろな出版社を転々として、今はソラジマさんでお世話になっています。
2024年ですね。ソラジマに応募してみたらトントン拍子に話が進んで『プリズンエンペラー』と『超殺し屋』に関わらせていただけて。Webtoonとしてはこの2本が初めての商業作品になります。
原作の脚本をいただいて、頭に浮かんだ映像を形にしていきました。小説を読んでいてなんとなく登場人物の顔や情景が思い浮かぶじゃないですか。アレをそのまま描いてみて、細かい部分をWebtoon向けにブラッシュアップしていった感じですね。
私はロジックや方法論をガチガチに固めると何も描けないタイプでして、文章を読んで「これだ!」って感覚で描くんです。もちろん基本のテクニックも大切ですが、それだけではどうしてもつまらない作品になってしまって……。
創作で絶対欠かせないのはインプットです。普段楽しんでいる本や映画とか、何気ない日常でふと気になったことをしっかり覚えて、絶対に忘れないように心がけています。
数をこなすのはあまり意識せず、心から「これ面白い!」と思ったものを何度も反復して自分の血肉にしていくイメージです。
例えば『プリズンエンペラー』の冒頭では縦に長い大監獄が出てくるのですが、これは映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に出てくる監獄を参考にしてみたんです。実際に描いてみる時に「アレがいいじゃん」って思って(笑)これが縦長のWebtoonとすごく相性が良くて好評でした。

『プリズンエンペラー』© 玉山雄大 / SORAJIMA
こんな具合で「そういえばあの作品にこんなシーンがあったな」「あの文章を参考にできないかな」とパッと思い浮かぶと創作でとても役立ちます。もちろん、バトルアクションのネーム作りにも活かされますね。
取り込む情報は創作物にこだわらなくてもいいんです。手塚賞に出した作品では東日本大震災の被災地を実際に訪れて、「私たちは絶対に負けない」という横断幕を見て感動した経験を活かしたりもしました。
あと、クリエイターであればいろいろな編集者とたくさん会っておくのもいいと思います。「この人はこういうタイプだな」とわかればコミュニケーションが取りやすくなりますし、自分はどんな編集者と相性がいいかも見えてきます。もちろん、個性的な人はキャラクターの参考にもなります。
やったこと、見たこと、感じたことは絶対に忘れないようにすべきです。大事な体験から日常の些細なことまで、流さずにしっかりと記憶に刻む。すると、ある日いきなり役に立ったりします。
クリエイターに無駄な経験なんて一つもないんです。それは強く伝えたいですね。

『プリズンエンペラー』© 玉山雄大 / SORAJIMA
インプットの話とも重なるのですが、私はTVゲームの『ダークソウル』や『エルデンリング』※が好きでして、特に「自分より強くて大きいボスが迫ってくる」シチュエーションの緊張感がすごく頭に残っているんです。今思うと、ゲーム体験を基に構図やキャラデザを閃いたんじゃないかな、と感じます。
※共にフロムソフトウェアの作品。ダークファンタジーの世界観と高難易度のアクションでファンが多い人気作
ゲームってバトルアクションを描く上ですごく参考になるんです。キャラのアクション、フレーバーテキスト、武器やモンスターのデザイン……いずれも立派な知識ですし、アイデアの種になります。クリエイターはゲーム遊びまくった方がいいです(笑)
Webtoonですので、スクロールした時にどうなるかを考えます。特に視線誘導では読者に「ジグザグ」に読んでもらえるかはすごく意識していますね。
キャラクター、セリフ、擬音などを一列に配置すると視線の動きがとても単調になってしまいます。キャラクターの目線、体の動きや足の向き、吹き出しの位置などをS字を描くようにジグザグとさせる。そうすると、自然と読みやすくなります。
他には画面を一方向からだけ描くのではなく、カメラを回すイメージでネームを作るのも大事です。主人公の顔から始まって、横、後ろへと視点が回っていくような。これは好きな映画を注意深く見れば「あ、そういうことか」と気づけるかと思います。

『プリズンエンペラー』© 玉山雄大 / SORAJIMA
Webtoonの特性を活かして「前向きなキャラは下に進む」構図に取り組んでいます。横読みマンガですと「前向きなキャラは左を向き、後ろ向きなら右を向く」というテクニックがありまして、これは読者が読む方向に沿ってキャラクターの心情を表現する考え方です。
Webtoonは下に下に読ませるわけですから、左右ではなく上下になりますよね。『プリズンエンペラー』なら、神に挑むジンは下向きに突撃させています。
逆に主人公が行き詰まるシーンなんかは空を見上げさせたりして、読者の視線も止めてあげる。全部のページでこのルールを守る必要はありませんが、効果的なテクニックです。

『プリズンエンペラー』© 玉山雄大 / SORAJIMA
ただ、Webtoonはチームで作るものですので、そこは横読みとは大きく違います。次の人が何とかしてくれるっていうのが本当にありがたいです。
私はネームを「絵の指示書」と考えていまして、なるべく文字を使わず絵だけで次の人に意図が伝わるように取り組んでいます。そうやって連携して1本の作品を完成させるのがWebtoonのだいご味です。


『超殺し屋』© 玉山雄大 / SORAJIMA
このシーンに限った話ではないですが「スクロールする手を止めさせない」というのは大事にしています。Webtoonはスピーディーに読めるのがウリですから、ページごとに情報量と余白のバランスを考えて、手を止めなくても読者に伝わるようにネームを考えています。
自分にとって最高の誉め言葉です。読者の手を止めさせない意識を持てば、自然とアクションにスピード感が出るんじゃないでしょうか。
とはいえ、勢いばかりではなく「これはリアルな動きかな?」と検証するのも大事です。パンチ一つとっても、自分で実際に動いてみて「これ当たるかな?」って確かめる。

『超殺し屋』© 玉山雄大 / SORAJIMA
『超殺し屋』なら、襲ってきた殺し屋にアマネがバットで殴りかかるシーンです。
まず「ここでアマネはバットをどう振るのか?」と考えてみる。この時のアマネは自分の力に目覚めていないし、敵を恐れている。なら威勢よく上から振りかぶるわけにはいかない、じゃあ少し斜めからバットを振るのはどうか、なんて具合に。
自分で動いて考えながら、キャラクターにとって自然なアクションを模索したりします。
「この主人公、かっこいいでしょ!」と読者に伝えたい気持ちが一番大きいです。アマネが2階まで跳んで月をバックにするシーンは特にそうで「こんな動き、してみたくない?」と語りかけるような……読んでいる人に憧れを持ってもらいたい。アクションシーンはそう考えながら描いています。

『超殺し屋』© 玉山雄大 / SORAJIMA
正にそうです! 動きはリアルだけど憧れる動きって人気マンガではよくあって、かめはめ波だって気は出せないけど「か~め~は~め~は~!」の動きは誰でもできるし、子供は真似するじゃないですか。
もちろん真似しちゃダメな動きもいっぱいあるんですけど、「このキャラの動きはかっこいい!」と思ってほしいんです。
読者に憧れてもらえる動きを作品に盛り込む。それを目指していけば、魅力的なバトルアクションに繋がると思います。
不安はないですね。むしろ発展途上にあるWebtoonにクリエイターとして関われるのが楽しくて!
担当編集の方ともよく話すのですが、Wetboonのトレンドってリアルタイムで変わっていくんです。今ヒットしているものが、来年、来月、もしかしたら明日にはまったく違うものに変わっているかもしれない。近い将来、自分のスタイルがトレンドになる可能性だってあるわけです。
そう考えると、不安なんて感じていられません。むしろワクワクしているかもしれないです(笑)
これからWebtoonに挑戦されるのであれば、本当に自分の描きたいように描いた物で勝負するのが一番だと思います。
自分が描いたネームをただ「こう描きました、はいどうぞ」と出すんじゃなくて「こう描いたら絶対かっこいいでしょ?」って納得させられるような絵や文章、色使いを意識することが大事です。
その気持ちは読者にも伝わります。つまらなそうに描いてるなってのも、楽しそうに描いてるなってのも、読者にはちゃんとバレてくれるんです。自分だけの「かっこいい」は本当に大事にしてほしいですね。
ありがとうございました!
玉山雄大先生の『超殺し屋』をチェック!
