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“得意”を広げ続けるチャレンジ精神の育み方とは? Webtoon脚本家・小椋康平先生インタビュー

本日のクリエイター

小椋康平

先生

マンガ原作者/脚本家
Webtoon『極道社畜』『エウレカ』を筆頭に、縦横問わず多くの連載作品を執筆。ソラジマTOONに発表した『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』も好評を博している。
趣味はテニスとボードゲーム。

作風、広げたくないですか?

“バトル”、“ファンタジー”、“ロマンス”……あらゆる創作にはジャンルがあります。複数のジャンルを手掛けられるクリエイターはプロの世界でも少なく、重宝される存在です。

今回ご紹介する小椋康平先生は、多彩なジャンルを巧みに書き分ける脚本家です。バトルやロマンスで複数の連載経験を持ち、さらに『ソラジマTOON』でゾンビパニックコメディ読切『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』を発表し、Webtoonの第一線で活躍されています。

まったく異なるジャンルに挑戦し、自分の“得意”を増やし続ける意欲はどう育まれたのか? 小椋先生からその極意を聞いてみました。

Youtubeアニメの脚本家から念願のマンガ家デビューへ

―まずは小椋先生のクリエイターとしての経歴を教えてください

20歳の時に「マンガ家になろう」と決めて『週刊少年ジャンプ』に持ち込みなどしていましたが、なかなか芽が出ませんでした。

そんな頃にソラジマさんのYoutubeアニメ『女子力高めな獅子原くん』という作品の脚本をやらせていただきました。それが縁でYouTubeアニメを3年ほど制作していて、500本近くの作品を手がけました。

そうした流れで「女性向けロマンス『婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。』のWebtoonコミカライズをやってみませんか?」と声をかけていただき、Webtoon作家としてデビューしました。

『婚約を破棄された悪役令嬢は荒野に生きる。』© 吉井あん / SORAJIMA

―アニメの脚本家としてキャリアをスタートされたんですね。最初から脚本1本で活動されていたんですか?

もともとは自分でマンガを描いていました。ただ、絵があまり得意ではなくて……昔から構成やキャラクターは好評だったんですが、とにかく絵がネックだと言われていました。今は原作や脚本に絞っています。

―クリエイターを志す上で影響を受けた作品はありますか?

一番影響を受けたのは『ジョジョの奇妙な冒険』ですね。独特なキャラクターや「これ絶対無理でしょ」というピンチから突破口を見出して戦う主人公たちに感銘を受けて「自分もそんな作品を書きたい!」と思ったのがきっかけです。

マンガ家になろうと具体的に決めたのは20歳の頃ですが、実は小学校の卒業文集にも漫画家になると書いていました。

―夢を叶えられたんですね。

Webtoonは『ドラクエ』のように共感してもらえるかが大切

―現在は『幽閉された令嬢は吸血鬼貴族に愛される』など、横読みマンガも手がけられています。

Webtoonで数年経験を積ませていただきまして、去年の後半ぐらいから本格的に横読みデビューさせていただきました。

元々集英社さんの「ジャンプルーキー※」に投稿したりもしていたのですが、巡り巡って今は原作者として横読みでもやらせていただいています。

※誰でも参加、連載ができるマンガ投稿サービス。ランキング1位になるとプロデビューのチャンスが与えられる。集英社運営。

―横読みとWebtoonでは画面が大きく違うと思うのですが、脚本を作る際に意識して切り替えているポイントはありますか?

そこまで大きくは意識していないんですけど、Webtoonでは1人の主人公を徹底的に見せるのが大切だと思っています。ゲームでいうと『ドラクエ』みたいに、主人公にフォーカスして物語を進めていくイメージですね。読者が主人公に共感してくれるか、一緒に成長していけるかどうかは意識していますね。

―マンガなのにゲームを意識されているとは、すごく興味深いです。他に脚本を手がけていてやりがいを感じるポイントはありますか?

役割分担されたスタジオ制作である点です。Webtoonでは自分以外の多くの人が作品づくりに関わってくれるので、自分の想像を超えた作画や演出を見るのがとても楽しいです。

また、プラットフォームで読者からコメントで反応をいただけるのも励みになります。

Webtoonでは珍しいゾンビパニックで追求した“新しい試み”

―読切『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』についても伺いたいです。本作はゾンビパニックかつコメディ色強めで、Webtoonとしては非常に珍しいお話でした。制作のきっかけはなんでしょうか?

実は、今回の作品はたまたまの流れで生まれたものなんです。「ゾンビものを書きたいな」と思って読み切り作品をやりたいと自分からLINEで提案しました。

偶然ソラジマさんでも読み切り作品を出したいタイミングだったので「ぜひやってみましょう」という流れになりました。

担当編集の方は元々YouTubeアニメ時代の監督で仲良くさせていただいていたのもあって、縁があったなという印象です。

―ゾンビものを選ばれた理由は何かあったんですか?

昔からゾンビものが好きだったんです。『バイオハザード』や『ウォーキング・デッド』のような作品をよく見ていたので、自然に「やってみたいな」と思っていたジャンルでした。

―本作は「プロゾンビ教習所」を舞台にしたコメディから始まり、後半から主人公とヒロインの恋愛が深まっていくギャップがとても印象的でした。どのような意図で構成されたのでしょうか?

『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』© 小椋康平 / SORAJIMA

私自身コメディ寄りの作品が好きなので、最初はギャグメインで描きたかったんです。ただ、Webtoonではコメディオンリーの作品は正直人気が出にくいジャンルなので、読者が共感しやすいラブコメ要素を入れた結果、ああいうバランスになりました。

―最初にゾンビコメディを描こうというアイデアがあって、そこに読者向けにラブコメを加えていったと?

そうですね。担当編集の方と「どうすれば読者に楽しんでもらえるだろう?」と話し合いながら調整した結果です。

―Xアカウントで告知ポストに「新しい試みもいくつかしてる」と書かれていました。具体的にどのような試みを取り入れたのでしょうか?

一番の試みは色の使い方ですね。主人公のトミーが人間からゾンビになる過程で人間性を失っていくのですが、それを表現するために色彩が徐々に抜けていき、ラストで世界に鮮やかな色が戻る演出を試してみました。横読みの白黒漫画ではできないWebtoonならではの手法ですので、特にこだわりました。

『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』© 小椋康平 / SORAJIMA

―私も読んでいてすごく引き込まれたポイントでした。画面が色褪せていく演出は以前から温めていたアイデアなんですか?

最初の打ち合わせで「Webtoonならではのインパクトある読み切りにしたい」という話がありまして、そこから思いつきました。カラー漫画ならではの工夫を入れた方が面白いだろうということで採用しました。

―作画や仕上げの段階で行う着色の指示も出されたでしょうか。

そうですね、作品の見せ場ですので細かく指定させていただきました。ただ最初の指示が甘くて、色が薄くなっていく過程がわかりにくい部分があったりして、パーセンテージ単位で修正してもらいながら何度か微調整をお願いしました。

おかげで完成原稿はすごく良い仕上がりになったと思います。キモとなる演出だったので、こだわった甲斐がありました。対応してくださったスタッフの方にも感謝です。

―他にも新しい試みはありますか?

絵柄のテイストですね。Webtoonでは見た目華やかな似たようなタッチの作品が多いんですが、今回は『ディズニー』や『スプラトゥーン』のようなカートゥーン調の雰囲気にしたかったんです。

ギャグ作品なので、リアルな作画だと笑いづらいかなと思いまして。なるべく親しみやすく、ポップな絵柄の作家さんを探していただきました。

―そういったこだわりが成功して、読者から連載を希望する声もたくさん届いていました。率直なお気持ちはいかがですか?

本当にありがたいです。読んでいただけるだけでも嬉しいのに、連載希望の声をいただけるのは光栄ですね。編集さんとも「連載化できたらいいよね」という話はしていたので、もし実現できたら嬉しいです。

もし連載するとしたら“ゾンビの教習所”からスケールアップさせて“ゾンビの学校”を舞台にした話をやりたいですね。もっといろんなゾンビたちのドラマを描けたらと思っています。

―ぜひ読んでみたいです!

ロマンス、バトル、そしてコメディ…多彩な得意ジャンルは「売れたい気持ち」と「インプット」から育った

―先生の長所である多彩な得意ジャンルについて伺わせてください。まず、改めてご自身の得意ジャンルを教えていただけますか。

バトル、ロマンスファンタジー、それとコメディですね。以前、極道がブラック企業の社員に転生する『極道社畜』というWebtoonを連載させていただいたので、極道ものと転生ものも得意といえるかもしれません。

『極道社畜』© 小椋康平 / SORAJIMA

―一番最初に「これが自分の得意ジャンルかも?」と手応えを感じたのはどんなジャンルでしたか?

バトルものですね。特にコメディ要素を交えたバトルが好きで、得意かなと思っています。YouTubeアニメの頃からそういう作品の方が反応が良かったので、自分の強みだと実感できているジャンルです。

―クリエイターの中には「自分はこれだけを極める!」とこだわって、未知のジャンルに挑戦するのが苦手な方も少なくありません。先生がバトルものに満足することなく、さまざまな作風を開拓できた理由はなんですか?

やっぱり「売れたい」という気持ちが強いからだと思います(笑)

売れるために「どうすればもっと多くの人を驚かせられるのか? 楽しませられるのか?」を常に考えているうちに、自然と新しいジャンルにも挑戦していくようになったのかなと思います。

―『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』の演出もそうですが、新しいことに挑戦しようという意欲が作品に反映されていますよね。

やはり読者の方に楽しんでもらいたいという気持ちが一番強いので、作品をより良くするためのアイデアは積極的に取り入れるようにしています。

―ハングリー精神とサービス精神を同時に感じます(笑)

恐縮です(笑)

―幅広いジャンルを手がける上で、普段から心がけていることや欠かさない習慣はありますか?

とにかくインプットを多くすることですね。普段からいろんなジャンルのマンガや映画を見て、ジャンル問わず吸収することを意識しています。

そうして蓄えた知識があれば、異なるジャンルでも「この要素は自分の得意分野と共通しているな」という部分が見えてくるんです。それをとっかかりにして作品に落とし込んでいくイメージですね。

―ちなみに年間のインプット量はどれぐらいですか?

映画なら去年は300本ぐらい観たと思います。

―300本! 作品づくりでお忙しいのにすごいですね……!

家事などのスキマ時間を活用して観ています。たとえば皿洗いをしながら映画を観たりして、とにかくインプットは欠かさないように心がけています。

―作品を観て抱いた感想やアイデアはメモを取ったりするんですか?

メモまでは取らないですが、気になったところは心に留めておきます。あとは妻と一緒に観て感想を話し合って、自分の中に落とし込んだりしますね。

インプットだけで満足せず、アウトプットする機会を作ることも大事なんです。人との会話を通して自分が何を面白いと思ったのか整理できますし、より深く自分の中に定着する感覚があります。

そうやって積み重ねていけば、自然と作風が広がって引き出しも増えていくのではないでしょうか。

―逆に、どんなジャンルにも共通する芯といいますか、先生ご自身のテーマはありますか?

どんな作品でも「最後は優しい気持ちになれること」は常に意識しています。残酷すぎる作品も読むのは好きですが、自分で書くのは少し苦手で……。最終的には読後感がほっこりしたり、救いがあるハッピーエンドを目指しています。

なにより、そういう作品が自分には合っていると思います。

デビューを目指すなら「引き出しを増やそう」

―今後Webtoonで挑戦してみたいジャンルや、こういう作品を作ってみたいという展望はありますか?

今後は、より王道のバトルものをしっかり描いてヒットさせたいですね。一応いくつか構想がありまして、連載できるよう進めているところです。

とにかくバッターボックスに立たないことには勝負もできませんので、常に新しいことに取り組んでいます。

『プロフェッショナル・オブ・ザ・デッド』© 小椋康平 / SORAJIMA

―最後に、これからWebtoonデビューを目指すクリエイターさんへメッセージをお願いします。

「いろんな編集者さんと関わること」が大事かなと思います。編集者とひと言でいっても人によって意見や感性は違います。1人の方と二人三脚でやるのも良いですが、なるべく多くの人と関わって自分の引き出しを増やしていくのが大切ではないでしょうか。

―今回のお話を通して、先生の作品づくりに対するチャレンジ精神がすごく伝わってきました。本日はありがとうございました!

ありがとうございました!

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