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業界分析
「創作にはインプットが大切!」
プロの漫画家を目指したことがある人なら、一度は耳にしたことがある言葉でしょう。あらゆる創作物や日常生活から情報を集め、自らの創作活動に活かす“インプット”は、漫画家はもちろん、一流のクリエイターなら誰もが意識的に取り組んでいる重要なプロセスです。
しかし、「インプットが大切だ」と理解していても、「具体的にどうやればいいのか」がわからず、戸惑っているクリエイター志望者も少なくありません。
今回は、「超メジャーな横読みマンガクリエイター VS 新時代のWebtoonクリエイター」と題し、第一線で活躍するプロたちのインプット術を紹介します。
ぜひ、自分に合ったインプット術を見つけるヒントにしてください。
「マンガの神様」手塚治虫は、インプットの重要性について次のように語ったとされています。
「マンガからマンガの勉強をするのはやめなさい。一流の映画を見て、一流の音楽を聞き、一流の芝居を見て、一流の本を読みなさい。そして、それから自分の世界を作るんです」
この言葉は、さまざまな分野における一流の芸術や文化に触れることの重要性を端的に示しています。映画のカメラワーク、音楽のリズム、芝居の感情表現、文学の物語構成——一流の作品に込められた本質や感動に触れることで、視野は広がり、表現の引き出しは格段に豊かになります。
手塚治虫が示したように、広い世界から一流を学び取り、自分にしか描けない「自分の世界」を築き上げていくこと。
それこそがインプットの本質であり、読者を惹きつけるクリエイターへの第一歩だと言えるでしょう。
まずは、誰もが知る有名な横読みマンガの作者や、カリスマ編集者たちが実践しているインプット術をご紹介します。
「雲の上の存在」に近づくつもりで、彼らの技を盗む気持ちでご覧ください!

『ONE PIECE』© 尾田栄一郎 / 集英社
『週刊少年ジャンプ』(集英社)の看板マンガとして長年君臨する『ONE PIECE』。その作者である尾田栄一郎先生は、あらゆるクリエイターの憧れと言っても過言ではないでしょう。そんな尾田先生は、インプットに強いこだわりを持っており、とくに最新作や話題作といった「今、世間が面白いと感じているもの」を貪欲に取り込む姿勢を大切にしています。
『ONE PIECE magazine Vol.1』(集英社)に掲載されたインタビューで尾田先生は、普段行っているインプットについて具体的に説明しています。
休日はなるべく新作映画をチェックし、20代のスタッフや編集者から流行の話題を聞き出すなど、情報収集では「新しいもの」を常に最優先に。
新しいコンテンツをただ楽しむだけでなく、「人はなぜこれを面白いと感じるのか?」と、一歩引いた視点で観察し、作品の骨組みを読み解くことで、自身の価値観を常にアップデートしているのです。
実際、尾田先生の新しいものへの行動は非常に目立ちます。2022年には、注目を集めた生成AIを使って「女の子になったルフィ」を制作。また、アニメ作品の応援上映に足を運び、そのコメントが話題になったこともありました。
尾田先生ほどの大御所でも、流行を意識して積極的にインプットしている——そう考えると、自分も何かチェックしたくなってきますね。

『HUNTER×HUNTER』© 冨樫義博 / 集英社
『HUNTER×HUNTER』(集英社)で知られるレジェンド作家・冨樫義博先生は、息もつかせぬ濃密なストーリー展開を持ち味としています。
しかし、新人時代から巧みだったわけではなく、苦戦した経験を経て、物語づくりのメソッドを一から構築した逸話があります。
冨樫先生がストーリー制作を学ぶうえで積極的に取り組んだのも、やはり“インプット”でした。『ヘタッピマンガ研究所R』(村田雄介/集英社)によれば、映画の脚本入門書を読んだり、面白くない映画を数多く観て「自分ならこうする!」と分析を重ねたりと、さまざまなアプローチを試みていたそうです。
なかでも印象的なのが、時間がないときに行っていた「短編小説を読みまくる」という方法。たとえば、2〜3ページ程度のごく短い小説を「これを長編にするならどう展開させるか」と考え、自分なりに膨らませていく作業を楽しんでいたと語られています。
ただし、冨樫先生はこうしたインプットを、「今後、純粋に物語を楽しむことはできない」という覚悟と引き換えに取り組んでいました。
第一線で活躍するためには、それほどの気迫と覚悟で自らを鍛える姿勢が求められるのかもしれません。

『チェンソーマン』© 藤本タツキ / 集英社
藤本タツキ先生の『チェンソーマン』、遠藤達哉先生の『SPY×FAMILY』(ともに集英社)など、国民的ヒット作を成功へと導いた林士平さんは、カリスマ編集者として広く知られる人物です。
林さんは、「面白い作品を生み出すにはインプットが欠かせない」「アイデアは既存の要素の組み合わせである」という信念を強く持っており、自身がその考えを誰よりも徹底して実践しています。
たとえば、林さんは話題作を中心に膨大な数の電子書籍をライブラリにストックしていると「ダヴィンチWeb」インタビュー企画で話しています。気になるストック数は、2024年10月時点でなんと2万冊を超えているとのこと。
このインプットへの情熱は、自身が担当するクリエイターにも注がれています。とくに新人作家に対しては、「映画や小説などの“名作”をとにかくたくさん観よう!」と強く勧めており、引き出しを多く持つことの大切さを必ず教えているそうです。
そうして担当作家に多くの名作を吸収させることで、その人自身が「面白い」と感じる感覚、すなわち“作家性”を見つけ出し、磨き上げる。
それこそが、林さん流の作家育成術なのです。
この記事を読んでいる方の多くは、Webtoonクリエイターを目指しているのではないでしょうか。
ここからは、Webtoonの世界で活躍するクリエイターたちが実践しているインプット術を紹介していきます。

『傷だらけ聖女より報復をこめて』© 編乃肌 / SORAJIMA
ライトアニメ化も決定した人気Webtoon『傷だらけの聖女より報復を込めて』。その原作・脚本を手がける編乃肌先生も、インプットを重視しているWebtoon脚本家の一人です。
「SORAJIMA STORY」でのインタビュー企画において、編乃肌先生は韓国発のWebtoon『捨てられた皇妃』の熱烈なファンであり、最新話を読むために韓国語を学んだと公言しています。
“好き”を追いかけながら作品を深く読み込む中で、煌びやかな衣装や舞踏会のシーンなど、読者が期待するロマンスファンタジーの“お約束”を自然とインプットしていったのです。
また、アイデアを生み出す際には『人魚姫』のような古典作品も積極的に参考にしています。
たとえば『人魚姫』を、「絶望するシステムがとてもよく構築された物語」として解釈し、自ら物語構造を分析。その結果、『傷だらけの聖女』の起点となるキャラクター「ガロット」が誕生したと語られています。
自分が大好きなマンガや昔話を“創作の土台”として活かす——これは、インプットの力を作品に昇華させた好例といえるでしょう。

『先輩はおとこのこ』© ぽむ / LINE Digital Frontier
「LINEマンガ」で通算2億ビューを突破し、アニメや映画でも話題となった『先輩はおとこのこ』。その作者であるぽむ先生は元々イラストレーターとして活動していましたが、その経験を基にWebtoonの世界で才能を開花させました。
ぽむ先生がWebtoon作家として大成功できた秘訣は「マンガの「第1巻」をひたすら読む」という思い切ったインプットによるものです。
ぽむ先生が行ったインプットの詳細は、「pixivsion」のインタビュー記事にも掲載されています。
『先輩はおとこのこ』連載中にストーリー作りを一から勉強しようと決意したぽむ先生は、「LINEマンガ」などのプラットフォームを活用して、大量の「第1巻」を読むことに注力しました。ひたすら数をこなして読者を引きつける導入方法や物語の展開を分析し、定番のパターンを理解していったのです。
その結果、ぽむ先生の頭の中にはさまざまな展開のパターンが蓄積され、そのどれかを使えばストーリーが作れるようになっていました。いわゆる「引き出しが増えた」状態ですね。
マンガの第1巻分ならば無料公開しているプラットフォームも少なくありません。実践的かつ、マネしやすいインプット術ではないでしょうか。

『極道社畜』© 小椋康平 / SORAJIMA
転生×極道モノ『極道社畜』や、ロマンスファンタジー『婚約破棄された悪役令嬢は荒野に生きる』(ともにSORAJIMA)の脚本を手がけるWebtoon脚本家・小椋康平先生も、インプットを大切にしているクリエイターの一人です。
「タテラボ!」掲載のインタビューによると、小椋先生は日頃からさまざまなジャンルのマンガや映画に触れ、特定のジャンルに偏らず幅広く吸収することを意識しています。
「とにかくたくさんインプットする」ことを習慣化しており、家事などの“ながら時間”を活用しながら、映画だけでも年間300本をチェックしているのだそうです。
ただし、重要なのは“量”だけではありません。
小椋先生はインプットした内容を、誰かと共有しアウトプットする機会をつくることも大切にしています。
親しい人と同じ作品を観て、感想を語り合うことで、思考を整理・深化させる習慣を続けているのです。
インプットだけで終わらせず、他者との対話を通じて「自分が何を面白いと感じたのか」を言語化していく。
それが、小椋先生流のインプット術です。
インプットとアウトプットを繰り返し、知識を血肉に変えていく——それこそが、クリエイターとしての成長を支える大切なプロセスなのかもしれません。
これまでに紹介してきた、6名のクリエイターによる実践的なインプット術を、あらためて簡単に振り返ってみましょう。
尾田栄一郎先生:新しいものに積極的に触れ、価値観をアップデートする
冨樫義博先生:短編小説を読み、「自分ならどう展開させるか」を考える
林士平さん:映画や小説の名作を数多くインプットする
編乃肌先生:好きなWebtoonや童話を通して“お約束”を学び、物語を構築
ぽむ先生:マンガの“第1巻”を大量に読み、ストーリー構築の引き出しを増やす
小椋康平先生:映画の感想を他人と語り合い、アウトプットで思考を深める
こうして見ると、インプットの方法は人それぞれで大きく異なることがわかります。つまり、憧れの作家と同じ手法が、あなた自身に合うとは限らないのです。
逆に言えば、プロのインプット術を「真似できない」と諦める必要はまったくありません。
この記事で紹介したテクニックを見て、「そんなにたくさんはこなせない」「うまく分析できそうにない」と感じたとしても、マネできる部分だけを取り入れ、自分に合ったインプット術を見つけていけば良いのです。

「タテラボ!」は、Webtoonでクリエイターを志す人たちを応援するWebtoon特化メディアです。Webtoonの作り方が一からわかる「タテ読みの教科書」など、多彩なコンテンツがありますので、更なるインプットを望む人はぜひ覗いてみてください!
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